LCIQ®️診断士/臨床心理士/公認心理師の3つの資格を持った and her 代表講師 が、あなたの恋愛相談にこたえます。皆さんもぜひ、「自分だったら・・・」と考えながら読み進めてみてください!
今回のご相談はこちら。
Contents
「母の日にプレゼントを贈らないっておかしくないですか?」
今回は、30代男性、イチロウさんからの質問です。
==
以前、アプリでマッチングしたミミさんという女性と会う約束をすることができました。
食事中の会話は思いのほか盛り上がり、まだ時間もあるとのことだったので、母の日のプレゼント選びに付き合って欲しいとお願いしました。
ミミさんは快諾してくれましたが、「母の日に必ずプレゼントしてるんですか〜?すごいですね!」と言いました。
僕はそれを聞いて、「え?」と思いました。
僕にとって、母の日にプレゼントを贈るのは当然のことです。
自分を産み育ててくれた母には、誰よりも感謝すべきで、それをきちんと言葉と形で示すべきだと思っています。
「母の日にプレゼントをしないなんて、家族を大事にできない人なんだな」と思い、ミミさんへの交際を申し込みたい気持ちが急激に冷めていきました。
結局、ミミさんが勧めてくれる物は母の好みと合いそうになかったので、軽くウィンドウショッピングをして解散しました。その後、連絡は取っていません。
やっぱり僕は家族思いの人と家庭を築きたいです。
そういう相手が現れるのを待ちます。
相手が「家族想いかどうか」を早い段階で見極める方法を教えてください。
==
イチロウさん、ご質問ありがとうございます。
ミミさんに交際を申し込みたいほど惹かれたのに、「母の日のプレゼント」に対するミミさんのリアクションから、家族に対する価値観の違いに気づき、イチロウさんはガッカリしてしまったのですね。
「これはとてもいい出会いができた」と高揚感もあった分、落胆も大きかったのではないでしょうか。
イチロウさんが大切にしている「家族想い」の感覚は、素晴らしいものです。
「家族想いの人と結婚したい」というイチロウさんの希望も、とてもよく理解できます。
その上で、イチロウさんにいくつかの視点をお伝えしながら、相手が「家族想いかどうか」を早い段階で見極めることの難しさをお話しします。
相手の発言の背景は?
まず、母の日にプレゼントを贈ることに対するミミさんの「すごいですね!」という発言を、イチロウさんはやや思い込んで解釈してしまっていませんか?
プレゼントする人のことを「すごい」と評価する人=自分はプレゼントをしない人である というように。
ミミさんは本当に「母の日にプレゼントをしない人」なのでしょうか?
そう決めつけるには、まだ早いかもしれません。
なぜなら、ミミさんの発言の背景にどのような想いがあるか、いくつかの可能性が考えられるからです。
①「マメさに対する感心」があるかもしれない
ミミさんが「すごい!」と感じたポイントは、“母”に贈ることより、イチロウさんの“マメさ”かもしれません。
ミミさんの発言が、
「母の日に必ずプレゼントしてるんですか〜?すごいですね!私は忘れっぽくて、去年も母の日の一週間後に、“お母さんごめん!これ母の日の分ってことにして〜!”と食事に行きました。友達の誕生日も、そういうことが多くて。だからちゃんと母の日に間に合うように準備するイチロウさん、すごいです!」
という意味だとしたら?
母の日を大事にしていることは同じで、ミミさんもイチロウさんと同じく家族想いな方であることが分かります。
②「尊敬できる人!」と好意を抱いているかもしれない
ミミさんは、イチロウさんへの尊敬の思いから「すごい!」と言ったのかもしれません。
ミミさんの発言が、
「母の日に必ずプレゼントしてるんですか〜?すごいですね!とっても親孝行で、イチロウさんほんとに素敵です。私は今まであまり贈りものして来なかったから、今年は私もイチロウさんを見習います。私の母の分も、今一緒に選んでもいいですか?」
という意味だとしたら?
イチロウさんの家族想いなところに惹かれ、リスペクトの思いや好意を抱いた可能性が考えられます。
③話がもっと展開するかもしれない
他にも、
「母の日に必ずプレゼントしてるんですか〜?すごいですね!私は母の日の前後で帰省するだけです。モノはないんですけど、娘の顔見れたら嬉しいかなと思って。娘の私が言うのもちょっと変ですけど。」
「母の日に必ずプレゼントしてるんですか〜?すごいですね!今まではどんなものを?私のおすすめのスイーツがあるんですけど、お店に行ってみませんか?お母様のお口に合うかなぁ。喜んでもらえるといいなあ。」
など、ミミさんの発言にはあらゆる背景があると考えることができます。
ミミさんの「すごいですね!」に続く言葉を、もう少しじっくり聞くことができていれば…
「母の日のプレゼント」から、もう少し話題を広げて会話ができていれば…
また違った素敵な展開があったかもしれません。
「家族想い」のかたちはさまざま
イチロウさんにとって「家族想い」とは、どのような言動のことを指しているのでしょうか。
“想い(思い)”という言葉の通り、人の気持ちや考えは視覚的に捉えることはできません。
表に現れる発言や行動は、人の気持ちや考えのうちのごく一部に過ぎなかったり、本来の感情や思考とは別のものに歪んで形になっていたりするものです。
だからこそイチロウさんは「プレゼント」という目に見える“モノ”と、「ありがとう」という明確な感謝の“言葉”で、家族への想いをハッキリと伝えてこられたのだろうと推察できます。
同時に、これがイチロウさんの「〜であるべき(マイ憲法)」として確立していき、「母の日にはプレゼントを贈るべき」「母の日に贈り物をしないなんてあり得ない」と、やや強い考えになっているとしたら・・・
家族を想う気持ちには様々な形があることに、想像が及びにくくなってしまいます。
“モノ”でなくても想いは届く
プレゼントで“想い”を伝えることもできますが、他にも、もっといろいろな伝え方があるのではないでしょうか。
- 日頃から「元気にしてる?」「仕事は順調だよ」など家族とコミュニケーションを取り合う
- 出張や旅行に出かけた時に家族の好きなお土産を買ってくる
- 家族が困っていることに気づいたらサポートにまわる
といった家族想いのかたちもあります。
目に見えるモノや、お金をかける、時間をかける、という分かりやすい想いの出し方ではなく、遠く離れていても「想いを馳せる」という家族想いのかたちもあるでしょう。
お母さんはきっと母の日の贈り物に心から喜ぶことでしょうが、だからと言って「プレゼントが無かったら悲しい、腹立たしい」ということはないと思っていいのでは。
母親の立場からは、
- 「久しぶりに電話で声が聞けたら、もうそれで充分嬉しい」
- 「貴重なお金と時間は、母のプレゼントより、友達や彼女のために使ってほしい」
- 「年1回の大きな花束よりも、毎月1回の小さな団子が嬉しい」
- 「母よりパートナーを優先できる人に育ってほしい」
などの声もあります。
「プレゼントありがとう。でも、気を遣わなくていいんだよ。」などの母親の本音にも、耳を傾けてみるといいかもしれません。
「母の日」が全てではない
イチロウさんは母の日以外にも、日常的にご両親への感謝を伝えていますか?
「日頃は照れ臭くて言えないから、母の日くらいは、ちゃんと感謝を伝えよう」という考えでしょうか?
母の日以外の家族とのコミュニケーションや関係性について、ミミさんと話をしましたか?
「母の日のプレゼント」に関する考えが不一致だっただけで、ミミさんのことを「家族を大事にできない人」「薄情な人」とやや決めつけてしまった可能性はありませんか?
ミミさんとたくさん話ができていれば、ミミさんの家族想いの面を知る機会にもなり、お互いに好意をより深める可能性だってあったはずです。
家族関係には個人差がある
中には、家族関係・親子関係があまり良好でない場合も考えられます。
「自分を産み育ててくれた親に感謝すべき」という考えはもっともですが、必ずしも皆が心地のよい家庭環境だったとは限りません。
様々な苦労や葛藤を乗り越えて「もう親と距離を持とう」と決意した人にとって、「親には感謝すべき」という強い姿勢は非常に重く、傷つけることもあります。
もし、話をしていく中で、「私、母親のこと嫌いなんで」「母親とはもう5年くらい連絡とってないんですよね」などの発言があった時も、
「なんて薄情な人だ」「ひどい親不孝者だ」と決めつけるのではなく、そこまでの関係に至った背景に想いを馳せてみましょう。
関係が浅いうちは、あまり根掘り葉掘り事情を聞き出すことは好ましくありません。
「そうなんですね、それぞれに事情があるものですよね」「親子だからこそ、いろいろ悩むことがありますよね」など、ほどほどの共感にとどめておくと良いでしょう。
「親を悪く言っちゃいけませんよ。どんなに不器用でも親は必ず子を愛しているに決まってます。」「悩みがあるなら僕に相談してください。一緒に乗り越えましょう!」など、あなたは良かれと思って出た言葉だとしても、なかなかその想いの通りには伝わりません。
受け取り方によっては、相手が「私の気持ちや状況を分かろうとしてくれない」と心を閉ざしてしまいます。
相手を“見極める”より、“もっと知りたい”がうまくいく鍵
イチロウさんは「家族想いの女性と結婚して温かい家庭を築くこと」を思い描いていることでしょう。
ですが、どんなに相性が良くても、どんなに大恋愛を経て結ばれたとしても、気持ちや考え、価値観の違いに直面することは避けられません。
たとえば、新年の迎え方ひとつとっても、家庭によってさまざまな習慣があります。
「お正月だからこそ贅沢に海外旅行へ」という家庭もあれば、
「お正月は家でのんびり家族団らんを大切に」という家庭もあります。
自分にとっての“当たり前”が相手にとっても当然だと思い込んでしまうと、「この人とは合わない」と早々に判断してしまうかもしれません。
離婚理由の上位には「性格の不一致」が挙げられますが、性格も価値観もすべて一致する人と出会うことは、ほとんど奇跡に近いことです。
だからこそ大切なのは、
違いがあることを前提に、歩み寄ったり、すり合わせたり、理解しようとする姿勢が持てるかどうか。
そして、「家族想いかどうか」を“見極めよう”とするよりも、
「この人はどんなふうに家族を大切にしてきたんだろう?」と、相手への興味や関心を持って関わる姿勢がとても大切です。
「あなたにとって、家族を大事にするってどういうこと?」
「子どもの頃の家族の思い出って、どんなものがある?」
そんなふうに、相手の言葉や行動の背景にも目を向けながら、日々の会話の中で少しずつ相手の大切にしているものを知っていけたら。
そこから、お互いの“家族観”を尊重し合うきっかけがきっと見つかります。
これからの関係は、二人で築く
交際も結婚も、家と家のつながり以上に、一人と一人の関係を尊重したいものです。
「今までがこうだったから」「自分にとってはこれが絶対だから」ではなく、「これから二人でどうしていきたいか」「ふたりで大事にしていきたいことは何か」を丁寧に対話し、深め、大切にしていくことで、より良い関係を築いていけるのではないでしょうか。
まとめ
今回の質問:「相手が家族想いかどうか」を早い段階で見極めるには?
相手の発言の背景を想像する姿勢を持つ
「母の日にプレゼントをしない=家族を大事にしていない」と決めつけるのは早い。
「すごいですね!」という言葉には、感心・好意・リスペクトなど様々な可能性がある。
家族想いの形は人それぞれ
プレゼント以外にも、家族との連絡、気遣い、サポートなどで気持ちを示す人もいる。
“モノ”ではなく、“行動”や“距離感”で家族想いを表現する人もいる。
家族関係は誰もが良好とは限らない
親と距離を置く選択をしている人もいる。
「親に感謝すべき」といった考えが、相手を傷つける可能性もある。
価値観の押し付けに注意する
自分の「〜であるべき(マイ憲法)」に固執すると、相手の良さを見落とすことも。
違いを知ることで、お互いを深く理解できるチャンスになることもある。
いろいろな会話を通して相手を知る
「ご家族とはどんなふうに過ごしてるんですか?」と、普段の関係性をさりげなく聞いてみる。
「家族のことで嬉しかった思い出ってどんなことですか?」と、感情のこもる話を聞いてみる。
相手の話を聞くときは「自分との一致・不一致度のチェック」など評価はせず、共感的に耳を傾ける。
急いで見極めようとしない
初対面や数回のやり取りでは、家族観を全て知るのは難しい。
さまざまな会話をし、時間をかけて人柄を知り合っていくことが、結果的に信頼できる判断につながる。
恋愛に関する質問、ぜひLINEからお気軽にお寄せください🎵